Q11.遺言書の作り方

Q11.遺言書は作った方がいい?どうやって作るの?

A11.遺言書は自分の家族への思いを文書にしておくものです。メリットはいっぱいありますから、その作り方にはこだわりましょう。

(1)遺言書のメリット

遺言は法定相続に優先する効力があり、各家庭の実情に応じて財産を分けることにより実質的なバランスを保ち、遺産分割をめぐる「争続」の防止に役立つものです。
具体的に遺言書が必要なケースとしては以下のようなものがあります。

①生前に財産の形成に貢献してくれたので法定相続分より多く与えたい。
②事業を継いでくれたので事業に関係する財産を与えたい。
③妻に子がおらず、自分の兄弟姉妹がいるので妻に全部与えたい。
④財産が居住用不動産以外には多くはないため、妻に居宅だけは与えたい。
⑤先妻の子と後妻の子がいるが、後妻の子に多く与えたい。
⑥認知した子がいるが嫡出子とバランスよく与えたい。
⑦特定の者(よく世話をしてくれた長男の嫁)に与えたい。
⑧孫に与えたい。
⑨内縁の妻に与えたい。
⑩福祉施設に寄付したい。

(2)遺言の作り方-その注意すべきところ

①遺言能力

遺言をする時にその遺言の内容や遺言がもたらす法的効果を理解し判断できることを遺言能力といいます。民法では遺言能力を行為能力より低くても足りるものとし、満15歳に達していれば遺言能力はあるものとしています。また、たとえ成年被後見人であっても本人が正常の精神状態に戻っている時は、医師2人以上の立会等の条件はありますが遺言ができます。
自分にとって不利な遺言をされた相続人から遺言能力を問われるケースが多くなっていますので、そのような疑念を払拭しておくためには、公正証書(下記②(ロ)参照)による遺言方法の選択や意思能力がある旨の医師の診断書の取得をしておくとよいでしょう。

②遺言方式

民法で定める遺言の方式には普通方式として、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の方式があります。その他に危急時遺言等の特別の方式があります。
遺言書には特定の財産を特定の相続人に「相続させる」という記載の仕方が最適です。それは財産が不動産の場合には、指定された者が単独で相続登記ができることなどのメリットがあるからです。
遺言は基本的にすべての財産についておこない、遺留分に十分な配慮をしましょう。
また、遺言内容をスムーズに執行するために遺言執行者を指定しておきましょう。

(イ)自筆証書遺言

自筆証書遺言は次の方式で作成します。
  一 遺言者が全文、日付、氏名を自書し押印すること。
  二 証書の加除その他の変更をした場合は遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し押印すること。

自筆証書遺言は遺言の内容や存在を誰にも知られることなく、いつでも手軽に作成できます。しかし、法的に内容が不明確で相続人間の争いになるとか、書き方に不備があって無効にされたりして遺言が執行されないことがあります。
また、相続開始後、遺言の保管者は家庭裁判所の検認が必要となります。

(ロ)公正証書遺言

公正証書遺言は次の方式で作成します。
  一 証人2人以上の立会があること。
  二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
  三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させること。
  四 遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自がこれに署名・押印すること。
    ただし、遺言者が署名できない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
  五 公証人が、その証書は前各号の方式に従って作成されたものである旨を付記してこれに署名・押印すること。

遺言者が口や耳が不自由な場合も通訳を通してこの方式で作成できます。
証人2人以上が必要なこと、公証費用がかかるなどのデメリットはありますが、内容等で争いになることが少ないこと、原本を公証役場が保管することから紛失・改変のおそれがないこと等から利用価値は高いといえます。

(ハ)秘密証書遺言

秘密証書遺言は次の方式で作成します。
  一 遺言者が遺言書に署名・押印すること。
  二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもって封印すること。
  三 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
  四 公証人がその証書の提出日及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名・押印すること。

遺言者が口の不自由な場合もこの方式で作成できます。遺言書の本文・日付・住所はワープロ等でもよいのですが、署名は自書が必要です。保管は公証役場ではおこないません。
また、相続開始後、遺言の保管者は家庭裁判所の検認が必要となります。

③遺留分

民法では遺言自由の原則が認められ、被相続人は遺言により自分の財産を自由に処分することができます。しかし、これを無制限に認めると遺族の相続できる財産がゼロとなってしまうこともあるため、財産の一定部分を一定範囲の相続人が取得できるようにしたのが遺留分の制度です。遺言をする場合には、遺留分を侵害しないようにすることも「争続」防止には大切なことです。

(参考)遺留分権利者と遺留分の割合

遺留分権利者 相続人 総体的遺留分の割合





遺留分





兄弟姉妹以外の相続人
直系尊属のみ 被相続人の財産×1/3



その他
直系卑属のみ



被相続人の財産×1/2
直系卑属と配偶者
直系尊属と配偶者
配偶者と兄弟姉妹
配偶者のみ

胎児・代襲相続人にも遺留分があります。
なお、ケースとしては少ないですが、受遺者(遺言によって財産の贈与をうける者)は遺贈財産(遺言によって贈与された財産)を放棄し、改めて相続人全員の協議によって財産の分配ができることを付け加えておきます。ただし、遺言執行者が決められている場合は、遺言執行者を交えて協議成立されることをお勧めします。

(イ)遺留分の減殺請求

遺留分権利者が遺留分を侵害された場合に、贈与や遺贈を取り返すことを遺留分の減殺請求といいます。相手方には内容証明郵便などで、相続開始及び減殺すべき贈与や遺贈があったことを知ったときから1年以内に意思表示しなければ時効になります。また相続開始から10年を経過したときも同様です。

(ロ)遺留分の算定

遺留分の算定の基礎となる財産は、被相続人が相続開始時に有していた財産の価額にその贈与した財産を加えた額から債務を控除して算定します。贈与した財産とは以下のものをいいます。

  • 相続開始前1年間の贈与
  • 被相続人が不当な時価で財産の売買取引をおこなった行為で、その取引の当事者双方が遺留分に損害を加えることを知ってなしたもの
  • 共同相続人中に、婚姻・養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けたときはその価額(特別受益)


④遺言事項

遺言として法的に効力が認められるのは以下の事項です。遺言の内容が公序良俗に反するときは無効となります。また、遺言者の死亡以前に遺言により財産を受ける者(受遺者)が死亡していたり、遺贈の目的たる権利が遺言者の死亡前に相続財産に属していないなどの場合は、その遺贈は無効となります。
法的に効力がなくとも遺族への思いや遺言の趣旨などを付記するとよいでしょう。

  • 財団法人設立のための寄付行為
  • 子の認知
  • 未成年後見人の指定及び後見監督人の指定
  • 推定相続人の廃除及びその取消
  • 祭祀主宰者の指定
  • 相続分の指定又はその委託
  • 遺産分割方法の指定又はその委託
  • 遺産分割の禁止(死後5年以内)
  • 遺産分割における共同相続人相互の担保責任の指定
  • 遺贈
  • 遺言執行者の指定又はその委託
  • 遺留分減殺請求方法の指定
  • 信託法上の信託の設定


⑤遺言の撤回

遺言者はいつでも、何の理由もなく遺言の全部又は一部を撤回し無効にできます。その撤回を放棄することはできません。つまり「この遺言はもう撤回しない」と宣言しても、またいつでも撤回できるというものです。
また、財産行為を内容とする遺言について、詐欺又は強迫があった場合は遺言者において取り消すことができます。

事務所概要

事務所名 渡部薫夫税理士事務所(TKC会員)
渡部千鶴社会保険労務士事務所
有限会社オフィス大手
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